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医療費の未払いが永住申請に影響する時代へ|1万円で在留審査の対象に

「病院の支払い、そういえば少し残っていたかもしれない」

これまでなら、在留資格の審査でそこまで気にする必要はありませんでした。しかし2026年に入り、状況が大きく変わっています。

医療費の未払いが1万円以上あると、入国審査だけでなく在留審査でも不利に扱われる可能性が出てきました。永住許可申請や在留期間更新を控えている方にとって、無視できない変更です。

この記事では、何がどう変わったのか、そしてご自身に心当たりがある場合に今できることを、順を追って整理します。


1. 何が変わったのか

もともと日本には、医療機関で一定額以上の医療費を支払わなかった外国人の情報を集め、出入国在留管理庁と共有する仕組みがあります。2021年5月から運用が始まっているもので、登録された情報は次回入国時の審査に使われます。

この登録の基準額が、これまでは20万円以上でした。それが1万円以上に引き下げられます。

■ 変更のポイント

(旧)未払い20万円以上 → 情報登録・入国審査で厳格化

(新)未払い1万円以上 → 情報登録・入国審査で厳格化

20分の1です。風邪で一度受診して自己負担分を払い忘れた、という程度の金額でも該当し得るということになります。

この方針は、2026年1月23日に「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」が決定した「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」に盛り込まれたものです。これを受けて厚生労働省も2026年2月4日に事務連絡を出し、報告システムの運用変更を明確にしています。


2. 本当に重要なのは、金額よりも「対象の拡大」

金額の引き下げばかりが注目されがちですが、実務の観点でより大きいのは、こちらの変更です。

対象が中長期在留者にも拡大され、
医療費の未払い情報が「在留審査」でも活用される

これまでこの仕組みは、旅行などで日本を訪れる短期滞在の外国人を主な対象としていました。目的も「次に入国するときの審査」に限られていたのです。

ところが今回、日本で暮らしている中長期在留者、つまり就労ビザ・配偶者ビザ・留学・永住者などで在留している方々にも対象が広がりました。そして情報の使い道も、入国審査だけでなく在留審査へと広がります。

在留審査というのは、永住許可申請、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請のことです。

これまで、永住申請で問われる「素行が善良であること」や公的義務の履行といえば、税金・年金・健康保険料の3点セットが中心でした。そこに医療機関への未払いという第4の項目が加わったに等しい状況です。


3. この変更が厄介な理由

私が実務家として気になっているのは、次の2点です。

(1)ご本人に自覚がないことが多い

税金や年金の未納は、督促状が届くので「払っていない」という認識が残ります。ところが病院の窓口自己負担の払い忘れは、記憶から抜け落ちやすいのです。

「後日精算」と言われてそのままになっていた。引っ越して請求書が届かなくなった。保険証を忘れて一旦全額払う話になり、うやむやになった。こうしたケースは決して珍しくありません。

ご相談の場で「医療費の未払いはありませんか」とお尋ねしても、悪意なく「ありません」とお答えになる。それでも記録上は残っている、ということが起こり得ます。

(2)「未払いがないこと」を証明する書類がない

税金なら納税証明書、年金なら被保険者記録照会回答票というように、公的義務の履行を証明する書類があります。しかし医療費の未払いについては、申請人の側から「自分には未払いがない」と示す統一的な書類が存在しません。

つまり、事前に確実に確認する手段が、現時点では乏しいということです。だからこそ、ご自身の記憶と行動が頼りになります。


4. こんなケースが該当し得ます

具体的にイメージしていただくために、いくつか例を挙げます。

ケース1 健康保険に加入する前に体調を崩し、全額自己負担で受診。金額が大きかったため「後で払う」と言ったまま、忘れてしまった。

ケース2 保険証を持たずに受診し、一旦10割負担に。後日精算のはずが、引っ越して連絡が途絶えた。

ケース3 入院時の差額ベッド代や食事代など、保険適用外の部分の請求が残ったままになっている。

いずれも、金額としては数千円から数万円程度。これまでの20万円基準なら問題にならなかった水準ですが、1万円基準では話が変わってきます。


5. 今できること

永住申請や在留期間更新を控えている方は、次のことを確認してみてください。

1. 過去に受診した医療機関を思い出す

お薬手帳、診察券、保険証利用の記録などが手がかりになります。ご家族の分も含めて確認しておくと安心です。

2. 心当たりがあれば、病院に直接連絡する

「以前受診したのですが、支払いが残っていないか確認したい」と伝えれば、調べてもらえます。連絡すること自体は何も恥ずかしいことではありません。

3. 残っていれば、申請前に支払う

未払いが解消されていれば、状況は大きく変わります。領収書は必ず保管しておいてください。

4. 健康保険への加入状況を確認する

そもそも保険に入っていれば、自己負担は原則3割です。未払いが発生するリスク自体を下げられます。


6. 国民健康保険についても動きがあります

同じ総合的対応策では、国民健康保険についても方針が示されています。

2027年6月から、すべての在留資格について国民健康保険料の納付情報を電子的に確認し、在留審査に活用するとされています。また2026年度からは、入国初年度の保険料を随時前納できる仕組みも導入される方向です。

これまでも保険料の納付状況は永住審査で確認されてきましたが、電子的に確認できるようになれば、より確実に、そして幅広い在留資格で見られるようになります。「うっかり納め忘れた月がある」という状態は、これまで以上に慎重に扱う必要があります。

永住許可申請の要件全般については、2026年の永住許可ガイドライン改定について解説した記事もあわせてご覧ください。


7. 正確な情報を確認しましょう

外国人と医療・社会保険をめぐっては、事実と異なる情報がインターネット上で拡散することがあります。

たとえば「外国人の国民健康保険料の未納が年間4,000億円にのぼる」という情報が広まったことがありましたが、厚生労働大臣はこれを明確に否定しています。令和4年度の国民健康保険料の未納額は、外国人に限らず全体で1,457億円であるというのが実際の数字です。

制度の変更は、不安を煽る話としてではなく、閣僚会議の決定文書や省庁の通知といった一次情報に基づいて理解することが大切です。ご自身の申請に関わることであればなおさらです。


まとめ

今回の変更を整理すると、次のようになります。

・医療費未払いの登録基準が、20万円以上から1万円以上へ引き下げ

・対象が中長期在留者にも拡大され、在留審査で活用される

・永住申請、在留資格変更、在留期間更新に影響し得る

・国民健康保険の納付情報も、2027年6月から電子的に確認へ

大切なのは、心当たりがある方は申請の前に解消しておくことです。未払いが残ったまま申請するのと、きちんと支払ってから申請するのとでは、状況が違います。

「もしかしたら残っているかもしれない」という段階でも構いません。ご自身の状況を整理するところから、一緒に考えさせていただきます。

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※本記事は2026年8月時点の情報に基づいています。制度の詳細な運用については、今後変更される可能性があります。個別の事案については、最新の情報をご確認のうえ専門家にご相談ください。

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著者
特定行政書士 森本 智恵子
SEED行政書士事務所
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